赤貝
えー、ご新造さんがお風呂へはいっていると、かわいがっている猫のタマが、
ニャアニャアと大騒ぎをはじめましてナ。
「おナベや、タマはどうしたんだい?」
「ヘエ、もうバカなんでござえます。さっき魚屋から赤貝を買ったんですが・・・」
「あア、そうだったねエ、それで?」
「タマが、それにチョッカイを出しましたもンだで、
赤貝が驚いてギュッとカラをを締めたんでごぜえます。
だもンだから前足ィはさまれて、へェ、大騒ぎで・・・」
「まアま、かわいそうじゃないの、え、面白がって見てちゃいけませんよ。
おまえ、ちょいとユカタ貸しとくれ。それから、なンかコジあける物をネ。・・・
まアまア、タマや、バカだね、おまえ。今、とってあげるよ」
ご新造さん、裸身はだかにユカタを一枚フワリと羽織りましてナ、
お手ずから、赤貝のカラをコジあけて、とってやる。
「ホラ、とれた、痛かったでしょう、タマや・・・」
と猫をフトコロヘ抱きあげると、湯上りの肌でございます。
猫がツーッとすべって、ご新造さんの下腹へ落っこちて行きましたが、
とたんに、毛を逆立てて、
「フーウッ!!・・・」
定本艶笑落語 小島貞二編より