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「肉体関係」有無がアウトとセーフを分けた? 「別れさせ屋」は公序良俗に反するか 

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司法が示した判断基準  

多額の報酬を受け取って男女間の交際に割って入り、関係を終わらせる「別れさせ屋」。法的にアウトかセーフか…

 男女間の交際に割って入り、関係を終わらせることをなりわいとする者を「別れさせ屋」と呼ぶ。工作員が偶然を装って相手に近づき、口説き落として心変わりさせる-。そんな契約の違法性が争われた訴訟で、大阪地裁は11月9日、「公序良俗に反するとはいえない」として、適法と認める判断を示した。多額の報酬を受け取り、自由恋愛を意図的に破壊するような行いが、なぜ法的に〝セーフ〟とされたのか。地裁判決からその線引きを探った。

自宅と通勤ルート割り出し

 昨年9月中旬、女性が大阪市内の探偵業者に「工作」を依頼した。意中の男性と、女性Aさんとの交際をやめさせてほしい、という内容だった。

 期間は90日間。Aさんの連絡先を入手すれば、着手金として90万円。そこからAさんを心変わりさせ、破局に持ち込めば、成功報酬としてさらに45万円を支払うという契約だった。

 依頼人の女性はAさんの勤務先だけは知っていた。業者の調査員2人はさっそく、Aさんの職場周辺で張り込みを開始。自宅の割り出しにかかった。

 最初の5回は空振りに終わったが、6回目に退社するAさんを発見。そのまま尾行し、自宅マンションを突き止めた。

 自宅が分かれば、次は出勤ルートだ。調査員はマンションから出勤するAさんの後を追い、職場までの道のりを確認した。

 さらにAさんの行き帰りの行動をもう一度チェックし、出退勤ルートを最終確定。それが10月初旬のことだった。

イケメンとの〝サプライズ〟

 《およそ2、3週間で接触するとのことでしたが少し経過がゆっくりなのは、何か難しい状況なのでしょうか?》

 依頼人の女性は当時、こんなメールを業者あてに送った。通常なら自宅と通勤ルートの割り出しはとうに終わり、すでにAさんと「接触」していてもおかしくないと、契約時の説明から思っていたという。

 このペースが業界基準に照らして早いか遅いかは分からないが、依頼からちょうど1カ月後の朝、ついに工作員が動き出した。「別れさせ屋」としての本格稼働だ。

 「すいません、駅はどこにありますか」

 その日午前8時過ぎ、マンションから出てきたAさんに声をかけた。そこから駅まで会話をしながら同道したのは、工作員ならではのテクニックだろうか。あえてなのか、ここでは連絡先を聞いていない。

 およそ10日後。帰宅途中のAさんに“サプライズ”が起きる。駅まで一緒に歩いたあの男性との、偶然の再会-。

 工作員「あのときの!? 覚えていますか?」

 この時のAさんの驚きは相当だったようだ。即日更新されたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の記載は大略、次のようなものだった。

 《10日前に道に迷ったイケメン男性に駅までの道のりを尋ねられた。偶然、帰りの駅で声をかけられ、2人で食事に行った》

 Aさんと工作員はここで互いの電話番号を交換し、無料通信アプリ「LINE」でもやりとりができるようになった。次のデートの約束もした。

 連絡先を入手すれば着手金として90万円-。契約の第1段階が終了した。

まさかの勘違い

 依頼人女性は業者側から工作の進展状況について報告を受け、こんな感想をメールで送った。

 《これは、もう完全に、◯◯さん(※工作員の名前)が気に入っていますよね。とても展開が早くビックリしています》

 同時に、AさんのSNSを読んで湧きあがった、ある違和感についても記している。

 《彼氏がいる人の書く内容とは思えないような…とてもいい感じの人ができてうまくいくといいな…という内容に見えるのですが…不思議で仕方ありません…実はもう別れていたりするのでしょうか》

 そもそもの前提は、依頼人女性が好意を寄せる男性と、Aさんが付き合っているということ。ところがSNSの文章からはそれが感じられない。

 女性の疑問は突如として氷塊した。業者あてのメールを引用する。

 《すいませんっ!!工作ストップして下さい!!対象者(※Aさん)が一方的に周りに交際宣言していたみたいで、彼は付き合ってないと言っているらしいです…》

 何のことはない、男性とAさんは付き合っていなかったのだ。女性は工作途中で契約を解約した。

 しかし、Aさんの連絡先を突き止めていた業者側は着手金の支払いを請求。女性が応じなかったため、大阪簡裁に訴訟を起こした。

探偵業法6条違反

 訴訟で争点となったのは別れさせ屋の当否そのものだった。

 探偵業法6条は「人の生活の平穏」を害さないことを守るべき原則として規定している。女性側は、探偵が業として行う別れさせ工作は、この原則に違反すると主張した。

 大阪簡裁の判断は明解だった。工作について「本来自由であるべき対象者の恋愛感情をもてあそぶことにより、対象者に男性との交際をやめる決心をさせることを目的としており、人格的利益を侵害する行為だ」として同法6条に違反すると認定。今回の契約について「公序良俗に反し無効」と断じ、業者側の請求を棄却した。

肉体関係はアウト

 だが、業者側の控訴を審理した大阪地裁では、女性側の逆転敗訴が言い渡された。司法判断を分けたポイントは何なのか。

 簡裁判決が別れさせ屋の是非そのものに踏み込んだのに対し、大阪地裁はあくまで個別の契約を問題とした。

 対象となったAさんは独身。交際相手と勘違いされた男性も独身だった。ゆえに地裁は「工作により、婚姻関係やこれに準ずる関係に不当に干渉するものではない」と判断。工作員がAさんと肉体関係を結ぶなど「社会的相当性を欠く方法」が予定されていなかったことも、業者側に有利な事情になるとみた。

 「(Aさんが)実際に交際を終了させるかは自由意思に委ねられ、業者が別れさせる目的を達成できる可能性が高いともいえない」(地裁判決より)

 要約すれば、工作員との出会いがあっても、肉体関係まではない以上、Aさんの意思決定にはそれほど影響しなかったと言いたいのだろう。

 裏を返せば、別れさせ工作の対象が既婚者同士やそれに近い関係の場合はアウト。対象が独身の男女であっても、工作員が性的関係を持てばそれもアウトというふうに読み取れる。

 では、肉体関係まで踏み込まなければ、何をしてもOKなのか。地裁判決は今回の契約については適法としたが、別れさせ屋については次のようにくぎを刺した。

 「倫理的に非難される余地は十分にあり、契約が社会的に相当かどうかは慎重に検討すべきだ」

 あのときのこと、覚えていませんか-。あなたの恋愛のターニングポイントに〝偶然の再会〟はなかっただろうか。

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