フランスの国民議会(下院)は、2016年4月6日、買春禁止法案を可決しました。フランスでは、これまでは売春・買春ともに合法となっていました。
売春者側への規制を強化していた 2000年代のフランス政府フランスでは、売春と買春は長らく合法とされていましたが、1946年に売春宿の経営が禁止されて以降、売春者たちは街の通りなどで客引きを行いながら顧客(買春者)を獲得していました。法的な規制の枠組みの中で、売春を容認していた時代が60年近く続いていたのです。
しかし、2003年に国民運動党連合のニコラ・サルコジ内相(当時)が策定した国内治安のための法律(いわゆるサルコジ法)により、治安対策の一環として、売春者による公の場での客引きが禁止されることになりました。
地下に潜り闇ビジネス化していったフランスの売春業サルコジ法が制定されたことで、売春を公に行うことは難しくなるも、売春行為自体は違法ではないという、非常に曖昧な状態が生まれました。その結果、多くのフランス人の売春者が売春業から退くようになった一方、外国人の売春者が増えるという新たな問題が発生しました。
現在のフランスの売春者の約8割は外国籍で、主に東欧やアフリカ諸国から違法に人身売買され、強制的に性労働に就かされているケースが見受けられました。また規制強化を受けて、ますます目の届きにくい場所へ隠れて行き、犯罪の温床になっていました。
「売春者への規制」から「買春の禁止」へ方向転換した社会党政権2012年に行われたフランス大統領選の結果、国民運動連合からオランド第一書記率いる社会党に政権が代わったことで、フランスの売春者への政策も大きく変わることになります。
社会党政権が打ち出した売春対策は、売春者への規制強化ではなく、売春者を被害者として保護する政策でした。そのために参考にしたのがスウェーデンで1999年に施工された政策です。
スウェーデンは売春ではなく買春を違法行為とし、買春者に罰則を与え、売春者を保護する政策を世界で初めて実施しました。その後、ノルウェーやアイスランドも、この政策に倣い新たな法律を制定しました。
フランスの社会党政権も、スウェーデンに倣って、2013年に新法案を提出しますが、野党からの反発などもあり審議が難航していました。
今年の4月にようやく可決された「買春禁止法」では、買春が違法行為に制定され、買春者に対し、初犯の場合は1500ユーロ(約18万円)、再犯者には最高で3750ユーロ(約46万円)が課されることになりました。また買春者となった者には、売春者の状況についての講習を受けることも義務付けられました。
一方、外国籍の売春者に対して売春以外の職を探すことに同意した場合は、フランスでの暫定的な定住資格を与えるなどの保護政策を取っています。
売春も買春も長らく合法だったフランス。この新政策が及ぼす影響が注目されています。
<参考記事>
・フランスでのこれまでの売春の状況、サルコジ法などについて説明する際に参照
・France24,記事の本文中で「八割」の声を紹介する際に参照