シャリーは、信心ぶかくて、善良な心の持ち主であった。
教会で、有りがたいお説教をきいてから、
毎日、一日一善を実行しようと、心にきめた。
それから、二十五日間は、順調にいったが、
二十六日目、家に帰ったとき、商売におわれて、
一日中、何もしていないのに気がついた。
「さあ、たいへんだ。こんなにおそくなっちゃ何もできない。
が、まあ、あす二つやれば、いいだろう」
と、心の中で、いいわけをしながら、ベッドにもぐりこんだが、
どうにも気になってしかたがない。
こんな夜ふけでは、外に出たって、乞食はおろか、犬のこ一匹いるわけがない。
もんもんと考えあぐんだすえ、シャリーはたった一つのこされた一善を思いついた。
シャリーは、ガバッと、ベッドから飛び起きると、まっすぐに、ながい間、
ひとりぐらしの雇い婆さんの寝室へ突進した。
当年六十歳になる婆さんは、かくて、シャリーの一日一善のお役にたったわけ・・・。
西洋風流小咄集 より
