色っぽい牝牛のエルシーが、牧場に放し飼いされていた。
隣の牧場には、逞しい牡牛のマークが放し飼いされていた。
二頭は、鉄条網の垣根越しに互いを見た。自己紹介の後、エルシーがセクシーに
流し目をつかって言った。
「いつかこちらにいらっしゃいな。あなたならこの垣根を飛び越せるでしょ?」
牝牛は悩ましげに尻尾を一振りすると、向こうへ歩いていった。
これを見て、牡牛の恋心は激しく燃え上がった。
彼は30メートルばかり後退ると、頭を低く下げ、鉄条網の垣根に向かって
猛然とダッシュした。彼は空中高く跳ね、エルシーのいる側の牧場へ着地した。
エルシーが彼のそばに駆け寄った。
「ああ、マーク!すてきだわ」
「これからは、マークじゃなくメリーと呼んでちょうだい」
と、牡牛は力なく答えた。
「あのいまいましい垣根は、あたしが考えてたより高かったの」
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