二つの卵
ゴントラン夫妻は、パリの植民地博覧会で、珍しい象の卵を一つ買った。
生まれたらひと財産じゃないかというわけで、夫婦でかわるがわる温めて、カエすことにきめた。
十日も、夫妻がひきこもっているので、怪しんだ隣家のデュラン夫人、「ご病気ですか?」と心配そうにお見舞いに来た。
すると、ゴントラン氏は、
「いやいや、象の卵をカエしているまっ最中なんです」
「まあ、珍しいこと、見せていただけません?」
といいながら、デュラン夫人は、毛布の下からそっと手をすべりこませた。
「まあ、卵が二つですわね!感じますわよ。・・・一頭のほうは、もう、鼻をぴくつかせてますわよ」
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