注意がかんじん
湯気が、もうもうとたつお風呂の中で、サリーは、ゆっくりと手足をのばして、からだを洗っていた。
うら口から入って来た彼女の夫は、それを見て、サリーの濡れたからだを、軽くたたいて、言った。
「よう、いつもながらきれいな肌だな。いま体重はどのくらいあるんだい?」
下を向いたまま、一生懸命からだを洗っていたサリーは、甘ったるい声で言った。
「五十八キロよ、あなた。そんなことより、
うら口のドアにカギをかけて来たの?
それから靴ももってきたでしょうね。
注意しなきゃダメよ。なにしろ、
うちの夫は、すごいヤキモチやきなんだから・・・」
西洋風流小咄集 より
