拝借
オーデル夫人が、自宅で編物をしていると、隣家の息子が、電話を借りに来た。
電話をかけようとした時に、ベルが鳴った。
受話器をとると、夫君のオーデル氏の声がきこえてきた。
「もしもし、オーデル家かね?」
「はい、そうです」
「きみは誰かね?」
「ぼくは隣のジョンです。これから拝借しようとしたら、
あなたからお電話でしたので・・・」
「拝借ってきみはいうが、妻は承知したのかね」
「はい、奥さんはこころよく承知してくれましたので、
もう少しで拝借してしまうとこだったんです。ですから、
ただいまのベルがもう少しおそければ、万事用は済んで、ぼくは帰るとこでした」
と、ジョンが説明すると、オーデル氏は、怒声をはりあげて、
「チキショウ!夫の留守を幸いに、若い男に大事なものを貸すなんて、
けしからん女房だッ!」
