私は妻のセンスで、洋館風の家に住んでいる。
おかげで、私の相棒であり家族の猫にベストマッチする洋間が、私の部屋だ。
ロシアンブルーの毛並みがよく映える。彼の名前はノイズルド。
あの人ひとりが入るほどの大きな桐箱が、私の宝物である。
ノイズルドも気に入っているようで、蓋の上を寝床にしていた。
なぜあんな箱が宝物なのかって?
人は信じないが、あの箱に身を収め目を閉じると未来に行けるのだ。
未来に行けると言っても、未来空間に自分の視覚と聴覚を投げ込むだけ。
未来を見て聞けるが、未来に直接干渉することは出来ない。
私はその箱を『神の目』と呼んでいる。
そして、その中で見ることの出来る未来映像を、『ミチビキ』と名付けた。
私はミチビキのおかげで生きている。
というのも、私は神の目で私を殺す人間を見た。
そして私は「現在」の世界で、殺される前にそいつを殺してやった。
それだけの事だ。
まだ何の事件にもなっていないようだ。
そいつの死体も完璧に隠した事だし、まだしばらくは大丈夫だろう。
それにしても、ノイズルドの体調が最近良くないみたいだ。
お気に入りの『神の目』の蓋の上にも、もう近づこうとしない。
ノイズルドの未来を見てみようか。心配になってきた。
私は神の目に顔を入れ目を閉じた。
そこで見たのは、腐敗して原型をギリギリとどめている愛猫の姿だった。
私は愛する相棒の悲惨な姿と、その腐敗臭にむせながら、「現在」に帰った。
まだ元気な唯一の家族を抱きしめ、私は未来を見たことに猛烈な後悔をした。
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