神の誤算
とあるエンジニアが死んで、「死者の門」に連れて行かれた。
天使ペトローは彼に報告した。
「誠に残念ですが、あなたは地獄行きになります。」
エンジニアは天使の手によって、そのまま地獄へ落とされた。
しばらくたつと彼は、地獄を快適にするための作業を開始した。
彼はその技術を生かし、エアコン、水洗トイレ、エスカレータ等次々に地獄の環境を改善していった。
エンジニアは、そうしてまたたく間に地獄の人気者になっていった。
ある日、天国の神が地獄の魔王に電話をかけた。
神は魔王をあざけり笑いながら言った。
「よう、魔王。地獄の生活は気にいったかい。わはは。」
「ああ、おかげ様で地獄の環境もずいぶん改善されてな。」
「何だって。」
「ま、エンジニアが次々と環境を整備してくれたおかげなんだが。」
「エンジニアだって!。ちょ、ちょっと待て!」
神は大慌てで「死者の名簿」をめくって叫んだ。
「おい、そのエンジニアは間違いだ。そいつは本当は天国に来るはずなんだ!」
「早くその男を天国に上げんか!」
魔王は首を横に振りながら返答した。
「そうはいかんよ。わしは彼のことがすごく気に入ったからな。」
「く、くそ。これじゃお前を地獄に落とした意味が無いじゃないか。」
「うむむ。おのれー。う、う、訴えてやる!」
神は真っ赤になって怒鳴った。
魔王は腹に響くような笑い声を上げながら言った。
「おう。訴えるってか。」
「それで、弁護士はどっから連れて来るつもりだ?」