ギネス認定、苦難の道
世界最長、世界最大、世界最高齢…。ギネス世界記録に認定された偉業がずらっと紹介された本「ギネス世界記録2016」が先月、世界同時発売された。日本の記録のページには「同じ司会者によるテレビトーク番組最長放送」として認定された「新婚さんいらっしゃい!」や、「同じ司会者によるテレビトーク番組最多放送」に認定された「徹子の部屋」などが紹介されている。ところで、ギネス認定といえば、一般的には割と簡単にできるという印象だが、その条件は極めて厳密で、手続も煩雑。芸能界の認定記録の中には、一度断念したケースもある。そんな申請者に苦労話を聞いてみた。(安田奈緒美)
文枝さんも再チャレンジ組だった
今年7月、落語家の桂文枝さんが司会を務め、放送開始から45年目を迎えた朝日放送の視聴者参加型トーク番組「新婚さんいらっしゃい!」がギネス世界記録に認定された。
公式認定員を迎え、認定証を手渡された文枝さんは「あっという間の45年でした。この番組に出合えて大変うれしい」と喜びを語った。
実は、同番組がギネス世界記録に挑戦するのはこれが初めてではない。過去にも申請を行ったことがあった。10年ほど前、記録申請するためには英文資料も読み込む必要があるため英語のスタッフも揃えて挑んだが、かなわなかったという。
そんな事情もあったので文枝さんの喜びもひとしお。「(認定までの10年間は)長かったです。それまでに番組が終わるか、または自分が倒れてしもうてはなんにもならんから、なんとか元気にやりたいなということと、番組が続いてほしいな、という思いがありました」と振り返った。
認定式には過去、申請したが当時は認定されなかった時代の番組関係者も駆けつけ、文枝さんの功績を称えた。
「世界最高齢バンド」 どうやって公演実施を証明するのか?
関西を拠点に活動するジャズバンドで、同じく7月に世界最高齢バンドとしてギネス世界記録に認定された「ゴールデン・シニア・トリオ」も、条件の厳しさと煩雑な手続きに悩まされた。
メンバーは、ビブラフォンの鍋島直昶(なおてる)さん、ピアノの大塚善章(ぜんしょう)さん、ベースの宮本直介さんの3人。いずれも関西ジャズ界を牽引してきた凄腕たちで平均年齢は83歳(記録達成当時)だ。申請したのは、3人から公演の司会を頼まれることも多いフリーアナウンサーの薗田涼子さんで、「年齢を重ねてもプロとして第一線で活躍し続ける3人の姿を世界中に知ってほしいと思った」という。
薗田さんによると、ギネス世界記録のホームページを通じて申請したのは平成25年11月。3カ月後の26年2月に受け付けられ、「世界最高齢バンド」としての記録挑戦のガイドラインが送られてきた。そして8月に必要書類を提出したのだが、10月に「書類に不備不足がある」と通達が…。
「ガイドラインには英文が多く、過去5年間に20カ所で45分以上の公演を行っている証明を送らなければいけない、という項目をあったのを見落としていたんです」
そこから薗田さんたちは公演記録を集め始める。公演チラシや契約書などがその証拠になるというが、年間何百と公演を抱えるプロのジャズ奏者たちが、すべての公演のチラシを保管する習慣はない。さらに、契約書を取り交わす公演もそう多くはなく、証明書類を集めることが難しかったという。
認定員派遣に100万円 払っても認定の確約なし
さらに薗田さんたちは、ホームページ上で申請する方法だと、やりとりの進行が遅く、認定されるまでに時間がかかりすぎると判断。今では「いつまで元気で現役でいられるか、わからないしね」と笑いながら振り返ることができるが、当時は「とにかく3人が元気なうちに、なるべく早くに認定してもらいたい」と切羽詰まっていたという。そこで、やりとりがスムーズになるよう、公式認定員を派遣してもらう方法を選択。派遣料は100万円(交通費は別途)だった。
ただし、当然のことながら、100万円を払えば認定が確約されるわけではない。証拠書類を提出すると、今度は「この出演者数の中で、トリオが45分以上演奏したとは考えられない。当日の進行台本を提出するように」と差し戻されるなど、計5件の証拠が不十分と判断され、認定員派遣の有無に関わらず厳しく審査されていることを実感したという。
その後も、公演記録を探して各ホールに問い合わせるなど、書類整備に追われた薗田さんたちスタッフ。ようやく書類がそろったのは認定員が大阪にやってくる約1カ月前だったという。
そして7月のトリオのライブ当日。中国・上海のジャズバンドによる平均76歳(2007年)という記録を更新し、見事、世界最高齢バンドとしてギネス世界記録に認定されたのだった。
「やっぱり世界一というのはすごい記録です。そのためには、厳密な審査があるのがわかりました。1回の申請でうまくいかなかったけれど、その分、トリオの3人も記録認定の重みをずっしりと感じています。とにかく、3人の功績を世界に発信できてよかった」と薗田さん。
トリオの3人も「長生きしていてよかった」と喜んだ。
「いいとも!」「徹子の部屋」「ウルトラマン」も
日本の芸能界ではこのほか、世界一の称号を得た記録が多数ある。
黒柳徹子さんが司会を務める人気トーク番組の「徹子の部屋」は今年5月27日、放送1万回を越え「同じ司会者によるテレビトーク番組最多放送」として認定された。また、タモリさんが昨年3月まで司会を続けた「笑っていいとも!」は「同じ司会者による最も放送回数の多い生放送バラエティー番組」として認定され、さらに「最も派生シリーズがつくられたテレビ番組」として「ウルトラマン」が今年、ギネス世界記録を更新している。