兵庫県は1日、全国で初めて自転車利用者に賠償保険への加入を義務付ける県条例を全面施行した。自転車店には購入客に保険加入の有無を確認する義務も課された。罰則はないが、自転車でけがをさせた場合の賠償額は近年高額化し、保険の必要性は高まっているだけに、加入義務化の取り組みは注目を集めそうだ。
警察庁によると、自転車と人の交通事故は昨年、全国で2551件発生。重傷事故も2006年以降、いずれも年300件以上起き、自転車側の責任が重い事故によって年2〜7人の歩行者が死亡している。神戸地裁では13年、小学生が自転車で起こした事故で、保護者に約9500万円の賠償を命じる判決が出た。
兵庫県内の13年の自転車保有台数は約324万台。県は自転車保険加入率を24・3%と推計する。ただし、推計の根拠となる13年のアンケートは、交通安全イベントの参加者らを対象にしており、現実には加入していない人の割合がもっと高いとみられる。
条例は、自転車利用者(20歳未満の場合は保護者)や、従業員が自転車を利用する事業者に保険加入を義務付けた。4月には県交通安全協会が、県民向けに年間掛け金が1000〜3000円と安価な自転車保険の募集も始め、9月末時点で加入件数は約4万3000件に達した。
義務化されたこの日、神戸市中央区の自転車店「ヤマダサイクルセンター」のマネジャー、藤本一宏さん(26)は「ほとんどのお客さんは条例を知らないが、勧めれば、ほぼ100%入ってくれる。今後、保険加入は増えるのでは」との見方を示した。来店した会社員、伊藤修一さん(24)は「会社から言われ、加入した。万が一の場合でも安心」と話した。【井上元宏】