【鹿間孝一のなにわ逍遙】
「ワンイシュー」は平成17(2005)年8月の「郵政解散」で流行語になった。
イシューとは論点の意味で「シングルイシュー」とも言う。
当時の小泉純一郎首相が執念を燃やした郵政民営化を“唯一”の争点にして、衆議院の解散・総選挙に打って出た。
“”でくくったのは他にも国政の課題は多々あったのに、論点を郵政一本に絞り、民営化に反対する候補に刺客を立てたからだ。
結果は自民党が圧勝した。
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11月22日投開票で、大阪府知事と大阪市長のダブル選挙が行われる。
橋下徹市長は立候補しないが、どちらも維新VS非維新の対決の構図になりそうだ。
維新側は5月の大阪市での住民投票で否決された大阪都構想の再挑戦を掲げる。
一方、非維新の各党・会派は「維新政治にピリオドを」で足並みをそろえる。
これもワンイシューの選挙と言えそうだ。そして勝敗のカギを握りそうなのが共産党である。
国政レベルでは、共産党は先月に成立したばかりの安全保障関連法(共産党は「戦争法」と呼ぶ)の廃止を訴えて、「国民連合政府」の実現を他の野党に呼びかけている。
思想も、政策も、政治手法も異なるが、従来の主張を棚上げしても共闘をというのだから、ずいぶん柔軟になったものだ。
大阪のダブル選では、独自候補の擁立を見送って、「反維新」の一点で自民党推薦の候補を“自主的支援”するという。
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都構想の住民投票で、わずかではあるが反対票が上回ったのは、実は共産党の組織力によるものではないかと思っている。
表だって共産党とは名乗っていなかったが、街で練り歩き、チラシを配る婦人部隊をよく見かけた。
1970年代に黒田了一知事を誕生させ、革新府政の時代を築いたように、根強い支持層がある。大阪府議会、市議会とも、大阪維新の会、自民、公明に次ぐ第4の勢力である。
しかし、いくら維新憎しといっても、自民党と手を組むのはどう解釈したものか。
そもそも共産党が支持を拡大してきたのは、ぶれない姿勢が評価されたからではなかったか。従来の支持者はきっと戸惑うだろう。
自民党でも、住民投票の際に共産党と並んで街頭演説したことに党中央では批判の声が上がった。
さらには公明党も共産党とは水と油である。
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かねて大阪の政界は、ずば抜けて強い政党はなく、いわば横並びだった。だから知事も市長も相乗りで波風は立たず、独り共産党が野党として独自の立ち位置を占めてきた。
それが橋下氏の登場によって変わった。強烈なキャラクターが支持を集め、維新の一強多弱になった。
多弱がまとまって維新の牙城を崩そうとするのもわかる。それが「反維新」のワンイシューである。
ただし、どちらが勝っても、選挙後の大阪は不透明である。
維新が知事、市長を維持すれば、都構想が息を吹き返す。実現のためには、府議会、市議会で過半数を得て、さらに今度こそ住民投票で勝たなければならない。
反維新の側が勝てば、都構想は消えるだろうが、その他の政策でまとまるかどうか。呉越同舟がいつまでも続くとは思えない。
仮に一勝一敗でねじれると「府市合わせ」になる。
注目の選挙だが、ワンイシューではなく、大阪が抱える課題について、もっと具体的に語ってくれないか。











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