問わず語り
「昔はよかったなあ、昔は・・・」
ボギー爺さんは、いつもの話をやり出した。
「なにしろこのオクラホマだって今みてえに人間がウジャウジャいなかった。
それに娘っ子だってみんなきれいで純情で、いまどきの若い者みたいに、
浮気しようなどと考えている娘は一人もいなかったもんだ」
ボギーの婆さんが、口をはさんだ。
「そうともさ。昔はよかったねえ。
いまどきの夫婦みたいにすぐ出るの別れるのという騒ぎもなかったし・・・
それに、この辺に森や林が沢山あって、
浮気しても見つけられる心配なんかしたことがなかったよ」
西洋風流小咄集 より