見ないわけには
村の牧師館に一人で住む老神父が、ある日保安官のもとをたずねて、
もっと村の風紀を厳重に取りしまってもらいたいと申しでた。
彼の言い分によると、いつも早朝から羊飼いの娘たちが、身に一糸もまとわず、
牧師館のまん前の小川で水浴するため、これが気になって、
睡眠不足がかさなるので、もし、彼女たちがこんごも水浴びをするのだったら、
下流の人目につかない場所でやるよう説得してもらいたい、ということだった。
保安官は承諾した。そして、さっそく羊飼いの娘たちに、
翌朝からもっと下流のさびしい所で水浴びをするようにと注意した。
数日ののち、また、老神父は保安官をたずねてきた。
「娘たちにはすぐ伝えましたが、まだ場所を変えませんか」保安官はおどろいて聞いた。
「いや、下流の方へ移ったが・・・」と、老神父は眠そうな目つきで言った。
「まだ寝室の窓からはよく見えますのでな」
保安官はため息をついた。
それから、また娘たちに注意を与えに、出ていった。
翌日、赤い目をした神父がまた現われたとき、
さすが根気のいい保安官も少々うんざりしたように声をかけた。
「まだ、なにかいけないところがありますかな」
「おかげで、だいぶ川下へ移っていたが、
それでも屋根部屋から望遠鏡で見えますのじゃ」