【骨董屋】
「忍び三重(さんじゅ~)」といぅお芝居でお馴染みの三味線ですが、これ
はこぉ、こっそり忍んで行ったり、暗がりの探り合いであるとか、泥棒が。
今日は別に泥棒の噺やおまへんねん、忍びと言ぃましても、忍び男に忍び女、
忍ぶ恋路のほぉですなぁ。
まぁ「忍んで」といぅところにあれ、スリルがあってえぇんやそぉですが、
自分の家の中でも忍んでる人がある。大きな道具屋、骨董屋のご主人、最近、
自分とこへ若い女中さんが来たといぅので早速目を付けまして、で、隙を見
ては口説くんです。
でまぁ、はじめのあいだは受け流してたんですけれども、だんだんヒツコ
なってきて「今晩お前のところへ忍んでくる」と言われて、さぁ困りました
なぁ。
「どぉしたらえぇやろ? ご主人にそない恥をかかすわけにもいかんし」
と、お上さんに打ち明けた。
▲まぁ、何かいな。うちの親っさんそんなこと言ぅてるのん、あの助平親爺
はホンマに何といぅ……。あぁ、よぉ言ぃなはった、かまへんかまへん。あ
のな「はいはい」言ぅといて、あんた今日、わての寝床へ来て寝なはれ。ほ
んで、あて代わりにあんたの寝間で寝てるさかい。
そんなことになってるとは知りまへん。ご主人のほぉは、こぉこっそり忍
んで女中さんの寝間へ。こっちは待ち設けてまっさかいに、素直に受け入れ
よる。
■なぁ、いややっぱり女は若こないといかんわい、若い女に限るなぁ。うち
の婆とはまぁえらい違いや。
と言ぅと、下から亭主の横っ面をパ~ンッ! と張り飛ばした。ビックリ
して、
■な、何をするんやッ!?▲あんた骨董屋の親爺してて、新しぃか古いかが
分からんのか!?
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