【医者間男】
この、女性といぅものは段々図々しなってくるもんで、
増長といぅやつですなぁ、
あるお上さんが自分のところへ始終来るお医者はんと懇(ねんご)ろの仲になってた。
で、段々だんだん高じてきて
「いっぺん亭主の前でやってみたい」えらいことを考えよったんですなぁ。
まぁ、ご主人のほぉはちょっとボ~ッとしてる男でっさかい。
●なぁ、いっぺんうちの人の前ででけへんやろか?
■何ちゅうことを言ぃだすねんな、そんなことがでけるわけがない
●いや、せやけどなぁ、何とか目の前でいっぺんしてみたら、
面白いやろと思うねや……。
うちの人ボ~ッとしてるさかい分からへん。
■「分からへん」ちゅたかてお前、そんなことができるかいな
●なぁ、何かあんた工夫ない?
■そぉやなぁ~……
と、よからぬ相談ができる。それから二、三日して、
家でご主人と二ぁりこぉ座ってるときに急にお腹を抱えて
「ん~ん、痛い痛い痛い、あぁ~ッ!」
とのけぞった。
びっくりした亭主が医者のところへ飛んで行って
「先生ちょっと来とくなはれ、えらいこってす」
来て、形ばかりの診察をします。
■ご主人、こらえらいことができた
◆どぉなりました?
■こら、お上さんの下腹(したはら)の奥深いところにな、
たちの悪い出来物ができてる。こりゃ事によると命にかかわるで
◆命に? どぉしたらよろしぃ?
■困ったなぁこりゃ……、いやあの、この出来物にな、
よぉ効く薬はあるんじゃが、場所が場所だけになぁ、腹の奥の深いところじゃ、
塗り付けるのに困るんじゃ。
■ん~ん、まぁそら方法がないことはないがなぁ、
困ったなぁ。いやもぉ一刻を争うねやさかい、何とかせんならんねやが……、
これはな、あんたにやってもらうと一番えぇんじゃが、
まぁあんた素人で、どのへんにどぉいぅふぅに付けたらえぇのか分からんじゃろが……
■まぁ、命にかかわることじゃで、わしがやらしてもらうがなぁ……、
とにかくこの薬を。
「薬を付ける、薬を付ける」といぅことで、お上さんをこぉ四つん這いにして、
塗り付けにかかったんですなぁ、目の前で。
それをジ~ッと見てた亭主、
◆先生(せんせ)、あんたが医者やなかったら、わしゃ疑うところや。
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