これからご紹介するのは、長年スポーツ新聞で風俗取材をする中で、とあるSM女王様から筆者が聞いた、実際にあった奇怪な話である。
SMクラブを経営する女王様は、店のスタッフに手を焼いていた。その人物は、人前での脱糞、さらに食糞といったハードなプレイもこなせる、M(マゾ)女の倫子(18歳・仮名)。彼女はそううつ病を患っており、日ごろ、精神安定剤や睡眠薬を服用していたことから、日によって気分や調子のムラがあり、そのせいで遅刻や無断欠勤など、仕事にも影響を及ぼしていた。女王様は若手のホープということで、大目に見ていたようだが、ある日を境に失踪してしまったのだという。
■精神を病んだ者同士のパーティーで大惨事
倫子はプライベートでは、ネット上で知り合った仲間(精神が病んでいる者たち)とつるんでいた。その仲間同士で飲み会をすることを、何よりも楽しみにしていたという。しかし、これは単なる飲み会ではなく、主催者の自宅マンションに、大量の抗うつ剤や精神安定剤などを持ち寄り、酩酊状態を楽しむなど、普通とは異なる飲み会だった。
この退廃的なパーティーでは、泡を吹く者、痙攣を起こす者、さらにはリストカットや、煙草・洗剤を食すといった自傷行為に走る者まで……。救急車に運ばれて胃洗浄をされるなどは日常茶飯事だったらしい。通常では考えられないが、このような愚行も彼女たちにとっては勲章であり、同じような悩みを抱える者同士の宴は、彼女にとって大層、居心地がよかったそうだ。
しかし、そのような平和は長くは続かなかった。ある日の集まりでのこと――。
普段から税金の無駄遣いを嘆くなど、政治的な発言が多い、男性A(20歳)がつぶやく。
「人間って無駄が多いよね」
初めはみんな、「そうだよ、物を持たないシンプルライフこそ一番だ」などと会話も弾んでいたのだが、再び男性Aが口を開き、こう言う。
「耳も目も、2つもいらないよね。手や足だって、ひとつで十分じゃん」
そして、あろうことか、突然、手に握っていたボールペンを勢いよく自分の片目へと突き刺したのだ。瞳からは鮮血が吹き出し、顔面が血だるまとなった。Aは苦悶の表情を浮かべ、床をのたうち回った。皆、薬で酩酊していた状態から覚め、すぐに救急車を呼んだ。倫子は、この一件で、彼らと距離を取ることを決めた。特に片目を潰した「男性Aのことを記憶から消したい」と、店の仲間に話していたそうだ。
■倫子宅に送られてきた謎のDVD
それから数年後、突然、当時の仲間、そして彼女たちの元に荷物が届けられた。差し出し人の欄には、片目を失った男性Aの名前が記されている。恐る恐る、封筒を開けると、DVDが1枚入っていた。
倫子はこの不気味なDVDをひとりで観ることはできなかったが、どのような内容であるのか興味がわき、店の仲間たちと事務所のテレビで鑑賞することにした。
DVDを再生すると、男性Aがキッチンで楽しそうに料理している姿が映し出される。しかし、すぐに動作がぎこちないのがわかった。注視すると、包丁を持つ反対の手の腕から先がない。通常の長さよりも短く、先端が丸みを帯びた腕で、まな板を押さえていたのだ。さらに、片足は1本しかなく、立つことすらままならない。そして、次の映像ではAの顔がアップで映し出され、片目・片耳となったAが「不自由って最高だよ」と気味の悪い笑みを浮かべていた。
……この映像を観て以来、倫子はうつ病が悪化してしまい、「今日も私のことを見張っていた」などと、男性Aに監視される被害妄想に襲われるようになった。店でも支離滅裂なことを言うので、店の仲間はしきりに精神科病院に入院することを勧めたという。しかし、そのかいもなく、倫子はこつぜんと姿を消してしまう。携帯はつながらず、住んでいたマンションの部屋はもぬけの殻となっていた。どこに行方をくらましたのか? 倫子のことが気掛かりでならないと、女王様は心配そうに話していた。
(traveling編集部)