え~、また艶っぽい噺を聞ぃていただきます。
今日はお芝居へご案内しょ~と思てまんねやが、
まぁ皆さん方もチビチビお酒でもあがりながら聞ぃてください。
わたしもやりながらしゃべらしてもらいます。
お芝居も昔と今とはゴロッと変わりまして、
わたしなんかが生まれる以前は電気の無かった時代、
こら早朝に芝居が始まって、夕方終わりでんなぁ。
電気の無い舞台てな想像もできまへんが、
舞台の上の天窓から明かりを取り入れてやったんやそぉで。
その時分「顔見世狂言」といぅのが大序が明け方から始まって、
日が暮れ五段目で終わるといぅ、その大序から五段目まで、
顔見世狂言の形を見せたよぉな唄がございます。
「五段返し」と言ぃましてな、上方の古い唄でんねん。
越後獅子の合の手(あいのて)に文句を付けた、
よぉでけてまっせ。ちょっとまぁ、
この「五段返し」から聴ぃてください。
♪東西東西(とざいとざい)、口上言ぃちょいと出て、
大序の幕開け、桜の花見、若殿、太夫、家老、
勘解由(かぁげぇ)、引道具(しきどぉぐ)、壁切り破り、
曲者待ったと提灯バッサリ、さりとは残念な。
♪二段目開くれば上使のお入り、宝の紛失(ふんじつ)ゆえ、
春太郎(はるたろ)切腹押しとどめ、
叔父御の悪事を見出したる家老一角(いぃかく)、
姫の輿入れ日延べする、黒装束、鉄砲狙ろぉて、
松の木めがけて手裏剣バッサリ、
落ちたところはドッサリ、チョンの幕。
♪三段目ぇの世話場の立役、畳を上ぁぐれば、主人の眼病(がんびょ)で……
このあと、三段目から、四段目、五段目と続いて、
で、お終いのハテ太鼓から、今度は芸妓や舞妓と大騒ぎちゅうとこまでいきまんねやが、なかなか面白い唄で、芝居見物といぅのは一日仕事でしたなぁ。
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